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14.マグダラのマリア

 今年は当博物館の開館20年ということで、この春から特別展をいくつかご用意してきました。そのひとつにナカジマ・コレクションの公開があります。所蔵者の中島正己氏は伊勢市の出身(私と同郷です)。現在名古屋の栄で「ボンド・ストリート」という、国内でも屈指のアンティーク・ジュエリーのお店を経営している人物です。今回の展示は氏のプライベートコレクションから4回に分けてテーマ毎に紹介するもので、すでに第一期の「王様からの贈り物」と「スコティッシュ・ジュエリー」、第二期の「古代様式のジュエリー」と「象牙彫刻」は終了し、現在は第三期の「カメオ」「エナメル」「モザイク」「指輪」を展示中です。

 当館の収集品は真珠を用いたジュエリーという基準で集めているので、それに当てはまらないものは所蔵していません。したがってジュエリー全般にわたる関心を持つ方にとっては多少物足りないところもあるのでは、と恐れているのも事実です。今回の展示はそういった不満というか、隙間を埋めるものとしても意義深いものと考えています。

 今回の展示の「カメオ」では多様な素材をご覧いただけます。当館の常設ではストーンカメオ、すなわち様々なメノウに彫刻したものを展示していますが、今回は貝と、ラーヴァと呼ばれる溶岩の作品が含まれます。なかでもラーヴァに彫られたイエス・キリストの像(ラクリマ・クリスティ)は大迫力で、ちょっと日本の根付けにも通じる趣味があるように思えます。根付けが西洋で評価されたのは、彼らにカメオ彫刻で培われた素地があったからかも知れません。

 それから「エナメル」。これも実に様々な技法があるのですが、今回はペイントエナメルです。要するに釉薬を何度も塗り重ねて焼き、絵をあらわす技法で、輝くような鮮やかな色彩が特徴です。二点展示したうちのひとつは「マグダレーナ」。若い女性が横たわって読書する図です。注意して見ると彼女の頭の方になにやら壺らしきものがありますが、これが出自をあらわしています。マグダレーナといえばなんの印象もなくても、「聖マグダラのマリア」といえば、ああ、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。新約聖書に登場する、キリストにより回心した罪深い女性、というイメージで語られる聖女です。受難前のキリストの足に高価な香油を注いだので、油壺が彼女をあらわす持物となりました。この持物(アトリビュート)は一種の約束事で、聖書や神話の登場人物を見る際、それが誰なのかを知る有効な手がかりです。

 このエナメル画の原画はかつてドレスデンの美術館にあった(現在は失われた)コルレッジオの作品です。美しい女性の読書と見ても、それはいっこうに構いませんが、図を正確に読み取ると、その背後に豊かな物語の世界が広がります。絵画や彫刻同様に、ジュエリーを作品として評価するためには、そういった視点が求められるのでしょう。

 他に「指輪」のコーナーでは仕掛けのあるリングをいくつか紹介しています。点数は全部で20点ですが、ひとつひとつは見応えがあります。ぜひお楽しみください。

マグダラのマリア

マグダラのマリア

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