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16.パノラマ島奇談

 NHK教育テレビで江戸川乱歩の「パノラマ島奇談」を取り上げる企画があって、取材を受けました。
 ミキモト真珠島=パノラマ島説は乱歩ファンの間ではしばしば語られる話題です。乱歩は青年時代、大正6年から鳥羽の造船所に勤務し、地元の女性と結婚しているので、当時相島といった真珠島を小説の舞台に選んだとしても不思議はありません。ただ、なんといってもフィクションなので、その要素のひとつになったといったほうが良いでしょう。

 「パノラマ島奇談」は大正15年から昭和2年にかけて雑誌「新青年」に発表された小説で、夢想癖のある人見広介という主人公が、自分とうりふたつの富豪になりすまして、一種のユートピアを建設する話です。小説では沖の島という島が舞台で、その場所はM県のI湾、S郡と記述され、主人公の人見とそっくりの富豪はT市に住んでいることになっています。それぞれに三重県、伊勢湾、志摩郡を当てはめるのが妥当でしょう。ただし、T市については要注意。というのもこの島はM県一の富豪であるT市の菰田家の所有という設定なので、真珠王と呼ばれた御木本幸吉とその出身地である鳥羽を想起してしまいやすいのですが、鳥羽が市になったのは戦後のことで当時は鳥羽町でした。したがってここは昭和初年に市政をひいていた津市が該当します。

 さらに、その沖の島へはT市から列車で1時間のT駅(これが鳥羽)に到り、そこからモーターボートで1時間。距離としては伊良湖水道に浮かぶ神島のような、絶海の島という設定です。S郡の南端、直径2里 (8キロ)の無人島というから、そんな島は付近になく、どこがモデルという話ではなくなります。

 乱歩がこの小説を発表した二年後、相島は御木本幸吉の手によって真珠ヵ島として整備されます。御木本幸吉は財界の大御所澁澤榮一の勧めもあって、養殖真珠の第一号を生んだ記念すべき島に養殖の過程を説明する真珠参考館や賓客を持て成す施設などを設け、それはまさに自らの事業に沿ったユートピアでした。あるいは乱歩は真珠島の建設作業の様子を見て小説のイメージを膨らませたかと思いたくなりますが、この時点で彼はすでに鳥羽を離れているのでその想像には無理があります。

 ところでパノラマとは周囲に書き割りを巡らしたアトラクションの一種です。入口から暗いトンネルを潜ってパノラマの中央に出るしかけで、突然に日常とは異なる空間に出るのが効果的だったのでしょう。今の真珠島はパールブリッジを渡って島に入りますが、もしもパノラマ島にするのだったら海底トンネルを掘って島の中央に入口を作らなくてはなりません。それにしても鳥羽湾の穏やかな島々のたたずまいからあのおどろおどろしい情景を創造した乱歩の異能にあらためて驚かされます。

 番組は12月13日、夜10時25分からの放映予定です。キャスターは大槻ケンヂ氏。私の出番は少しだと思います。お楽しみに。

昭和37年初版の文庫本

昭和37年初版の文庫本



陸地側から見た真珠島

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