18.おみやげ博覧会
新春恒例のナツカシ系展示、今回はおみやげ物にスポットを当てた企画です。おみやげの本来については神崎宣武氏の考察にもあるように、寺社詣でをした旅人が「宮笥」、すなわち神社でいただく酒器を持ちかえって国元の縁者に功徳を分配したという説が有力です。ここではそうした事柄を踏まえて、もっと近い昔にこの地方のみやげ物店の店頭を飾っていた品々を集めて展示してみました。
前回、「海女の民俗」を担当した井上、松崎の両君が、秋の修学旅行で賑わう二見のみやげ物屋通りを訪ね、相当量の資料を収集してきました。土地の特性から貝殻を用いたものや、海女の姿をモチーフにしたものが多くを占めています。まず貝を使ったものでは帆船、カメ、カエルなど小動物、人形、笛、宝石箱に標本、モビールがあります。どれもバイガイやサザエ、アカガイなどのありふれた貝をそのまま組み合わせたもので、素朴な作りです。なかにはこの地方では採取されない淡水貝を使ったものもありますが、これらは琵琶湖で佃煮用に採集されるイシガイ類の殻を利用したものでしょう。単純ですが、ほのぼのとした味わいは捨てがたいものです。
それから海女のフィギュアも多数揃いました。もともとこの地方の海女は昭和十年代までは上半身裸で作業をしていたので、今日イメージされるような白い磯着姿になったのはそう古いことではありません。おそらく昭和三十年代に観光ブームの到来とともに磯着の海女の姿をモデルとした人形がおみやげとして作られ始めたと見ていますが、その姿が実は一様ではありません。詳細は展示をご覧いただくとして、大別するとひとつは従来の人形の顔に海女を表すアイコン、すなわち磯着や水中眼鏡、桶などを付属させたもの、他方は人造真珠で飾ったプラスチックのこけしに海女のアイコンを付けたものということになります。それぞれ、非常に多様なデザインがありますが、海女の風俗を正確にあらわしているものはそう多くはありません。
むしろ現代まで生き延びた、素焼きに着色した海女人形(それらの多くは土鈴や貯金箱の機能が加えられている)のほうが白い磯着といい、桶や眼鏡といい、正確にその姿を伝えているようにも思えます。そのように多様性から遠ざかることは、海女の像がかつてのような人気を得ていないことのあらわれともいえますが、一方で国民的なキャラであるハローキティやカトちゃんが海女姿に身をやつしていることを思うと、まだまだ捨てたものではないともいえます。
他にも観光絵はがきやペナント、実用性を無視した文房具の数々など、どこかで見たことのあるみやげグッズが満載の展覧会です。どうぞお出かけください。

昭和30年代の勉強部屋を再現


46体の海女人形は壮観