22.雨の日なので古いパンフレット・・・
おやおや、こんなところに見慣れないファイルがあるぞ、と収蔵庫から出してみると、ずいぶん以前に神戸の真珠輸出組合で貰ったパンフレットが入っている。いつか整理しようと思ってそのままになっていたらしい。組合の倉庫を片づけた時に出てきたのを頂いたものだから、年代もなにもデータはなく、点数も少ない。ひとつ点検をしようと開けてみて、まず目に留まったのが上 (写真1)のパンフレットだ。ちょうどEPサイズ、っても今時の人にはわからないな、横が182ミリ、縦が174ミリ、折りを広げるとこの四倍の長さになる。表紙を見たとき、これはジャズレコードのジャケットそっくりじゃないかと思った。その昔、ベツレヘムというレーベルがあって、そこのジャケットデザインはバート・ゴールドブラッドというデザイナーが手がけていたのだが、そのセンスに非常に近いものを感じたのだった。真珠のネックレスとイヤリングを付けた若い女性の横顔を左に配置して、右に小さな活字でPEARL OF JAPANと三段に組んだ構成といい、モノクロ写真と落ち着いた珊瑚色の対比といい、実にジャージィないい感じを出している。詳細に見ると写真の切り抜き処理が多少ラフだが、そんなことは気にする必要はない。ともかくこれだけの感覚の販促物を昔の真珠業界は作っていたのだ、と感心してしまった。裏面は曲名とパーソネルの紹介、ではなく、調子を抑えた海女の写真と簡単な説明が添えられているのも上手い対比だ。中面は見開きで養殖場の写真があり、さらに開くとMIRACLE OF OYSTERと題した養殖の過程、対抗面には真珠の装身具の写真がいくつか並ぶ。すべて英文表記で、出所から海外向けに作られたものだろうと想像がつく。おそらく1960年代と推定されるが、勢いのある時はなにをやっても上手くゆくものだと思わないではいられない。
もうひとつ、すこし小型のパンフでFUJI PEARLという会社が出したものも気に入った (写真2)。やはり若い女性をモデルに使っているが、こちらは灰色がかった緑色を背景に、肩を露出した深緑のドレスをまとっている。真珠のネックレスは二連、胸元にブローチを付け、右手を軽く差し上げて、まるでフランス人形のようなポーズを決めているのが宜しい。先程のがピアノトリオなら、こちらは白人女性ヴォーカルか、あるいはいっそ日本の歌い手でも悪くない。いずれにしてもジャケットだけで買ってしまいたくなるだろう。
こんな資料を発見すると嬉しくなってコーヒーを飲みに外へ出たくなるが、地方では喫茶店の数も少なくなってしまったので、自分で淹れて飲むことにしよう。
(今回は植草甚一調で遊んでみました。不出来の段はお許しください)

(写真1)

(写真2)