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40.城下町散策

 軽井沢の知人の別荘で友人たちと久しぶりの宴を楽しんだあと、ひとりでしなの鉄道に乗って小諸、上田を訪れました。ふたつながら城を中心に発達した町ですが、小諸は城門と石垣、上田も城跡に隅櫓が残されているのみで、そのぶんかえって趣が深いことを予想させてくれます。我が鳥羽の城も遺構といえば石垣を僅かにとどめるだけですが、残されたものの価値を継承する方法を考えるのに良いのでは、などと思いつつ小諸駅を降りて、懐古園と名付けられた城址公園へと向かいました。

 司馬遼太郎は『街道をゆく 信州佐久平みち』のなかで懐古園前の食堂の退廃ぶりを珍しく厳しい調子で書き記しています。その店をぜひ覗いてみたかったのですが、探し当てることができませんでした。客寄せに大音響で歌謡曲を流し、店内はふてくされた表情の女店員ひとりというような食堂がいまでも存続しているのでしょうか。公園の中にある別の蕎麦屋はひっそりとしていて、暖簾が心もとなげに揺れ、客のけはいもないようでした。強い夏の日差しをさえぎる木立と蝉時雨の下を行き交う人々はこの場所に刺激を求める様子もなく、けして年配者ばかりではないのに、いい具合に練れたというか落ち着いた雰囲気を漂わせている。公園内の藤村記念館や郷土資料館もできてからおそらく30年以上は経過していると思われ、埃と防虫剤の混じったにおいのする空間は博物館のわびさびを具現化しているように見えます。こうやって観光名所は年を取ってゆくのだな、と自分たちのことを棚にあげて妙な感慨に耽ってしまいました。

 一方の上田の城は、子供の頃に聞いていたラジオドラマ「真田十勇士」の印象からくる過剰な期待があったからか、あるいはたまたま開かれていた派手なイベントのせいなのか、しみじみとした情感を味わう点で小諸に一歩譲ったように思えました。それでもイベント会場にたなびく真田十勇士の名前を記した幟や、中心商店街の店先に六文銭が看板として掲げられているのを見ると、江戸時代の価値のあり方というものを今に伝える剛毅な気風の町なのだと解り、好い気持ちにさせてくれます。池波正太郎の『真田太平記』を読んでこの町を訪れる人もきっと多いことでしょう。

 両市ともに町の核として城が存在する物理的な事実に加えて市民が歴史と文化を理解して大切に守り育てている様子が、短い滞在ながら、伝わってくるようでした。因みに真田家が上田の城主だったのは江戸のはじめまでで、その後お殿様は千石氏、松平氏と代わりますが、地元の意識ではこの土地は六文銭すなわち真田様のご城下であるらしい。このあたりは幕末まで数多くの城主を迎えたにもかかわらず、初代の九鬼嘉隆を慕う鳥羽と事情が似ているようです。

小諸 懐古園入口

小諸 懐古園入口



上田 城門

上田 城門

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