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46.近頃読んだ本

 「日本の古本屋」というサイトで検索をかけて古書を買うことが常態となりつつあります。近頃、このサイトで求めた長尾雨山の『中国書畫話』と日夏耿之介『明治大正詩史』についてお話しましょう。

 前者は個人的な趣味で、中国の書画の流れを一望できる得がたい一冊です。稀代の碩学長尾雨山は明治から大正、昭和にかけて京都で活躍した人。市井の研究者であったためか著作が少なく、まとまったものはこの一冊のみで、しかも長らく絶版状態です。版元は筑摩書房なので、ちくま学術文庫あるいは平凡社の東洋文庫ででも復刊すればと思ったりしますが、まあ原著を入手したからいいか。講演録をもとにしているので、実に明快な語り口で中国書画のあらましを分かりやすく示してくれます。

 後者は、詩人伊良子清白について知る必要があるため。講師をしている鳥羽市の「地球塾」で、近く清白をはじめとする鳥羽市ゆかりの文学者を学ぶプログラムがあり、その予習のつもりです。伊良子清白の評価は日夏耿之介のこの評論で定まったといわれているので、その原典を知っておかなくてはなりません。詩人としての日夏耿之介の名はたとえば澁澤龍彦の著作にしばしば見られることで知っていた程度で作品に触れることはなく、ましてこの評論集の存在などはまったく不明でした。佐賀の古書店から届いた本は戦後間もないころの創元社版箱入り三冊本で、多少くたびれているものの、その中身の濃いことは目次を一瞥しただけで予感できます。

 日夏耿之介はこの本のなかで清白の主要作品を取り上げて、感覚と技法の美しい一致を高く評価しています。そして『孔雀船』一巻を残して詩の世界から去った清白の才能を惜しみ、コウルリッジやサアディといった大詩人の名前を引き合いにして、その大成を夢想しています。相当の惚れ込みようであったことがわかります。伊良子清白はその後、町医者として鳥羽の小浜に住まいし、晩年は更に大台町に移住してそこでなくなります。詩人としてはほとんど忘れられた存在でしたが、日夏耿之介のこの評価によって日の目をみることになりました。鳥羽市はこの詩人が市内に住まいしていたことを伝える意味から、大台町にあった住宅を市内の公園内に移築、この七月には整備を終えて記念館として公開される予定です。

 日夏耿之介のこの書物は明治の新体詩から浪漫派、象徴主義、さらに漢詩や俳句まで網羅しており、巻末の索引を引きながら拾い読みする楽しみもあります。五十代も半ばを過ぎてこういう本に出会うのもなにやら悔しいような気分になるといったら、さらに年配の方にたしなめられるでしょうか。たいへん高踏的な文章で最初はとっつきにくいものの、勢いがつくと案外楽に読めるのも嬉しく、「地球塾」で一番恩恵をこうむっているのは実は僕自身なのかも知れません。

2009年7月23日に開館する「伊良子 清白の家」

2009年7月23日に開館する「伊良子 清白の家」

2009年7月23日に開館する 「伊良子 清白の家」(上2枚)



『明治大正詩史』

『明治大正詩史』

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