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57.最近の収穫

 ここ数ヶ月の間に入手した「真珠本」についてお知らせしましょう。これは、表題に「真珠」の文字を含むか、あるいは作中に真珠がなんらかのかたちで登場する小説のことで、いままでに約60タイトルを収集、一部は博物館のレファレンスコーナーに配架しています。

 ごく大雑把にいうと、西洋の作品は実際に真珠が作中の小道具として扱われるのに対して、日本の作家は表題に「真珠」を用いるだけという傾向があり、今回ご紹介する数作もこの例に漏れないものでした。

西洋の小説、特にミステリーで真珠の役どころは、盗まれるか、真贋を巡るか、あるいはその両方が絡む、というところが決まり相場です。盗難事件ではアガサ・クリスティに「桃色真珠紛失の謎」や「高価な真珠」などといった作品があります。真贋を問題にした作品で贋物として扱われるのは、ガラス玉に真珠のような塗装を施したいわゆる模造真珠のことで、イギリスの文豪モームの「真珠の首飾り」やロシアの作家レスコーフの同名作品『真珠の首飾り』などが該当するでしょう。

 一方、日本の作家は表題に「真珠」とうたいながら、実際には作品中に登場させないケースが多い。菊池寛の『真珠夫人』はごくわずか装身具の描写に真珠が出てきますが、ヒロイン荘田瑠璃子が真珠とされる説明はありません。前にこの欄で取り上げた山岡荘八の『真珠は泣かず』、久米正雄『三つの真珠』、今東光『おしゃべりな真珠』、源氏鶏太『鏡の中の真珠』などにも真珠そのものは出てこない。今回入手した大佛次郎『夜の真珠』もまさにこちらの系統の作品で、夜の世界に生きるヒロインの女性を真珠に喩えるのは良いとして、作者はどのような属性をそこに仮託しようとしたのか、それは当時の読者の理解と共感を得られたのか、気になります。『夜の真珠』は昭和9年に限定四百部で発行されたもので、古本市場では結構高価です。今回入手したのは『大佛次郎セレクション』という選集の一冊。未知谷という書肆の発行で、なかなか造本装丁ともに美しい本でした。横浜の酒場を舞台とする話で、戦前の通俗小説ながら読み心地は快適です。

 仁木悦子『赤い真珠』は表題作を含む6編を収めた推理短篇集で昭和46年に毎日新聞社から出ています。赤い真珠とは妙なタイトルと思いつつ読むと、プラスチックの模造真珠をマジックインクで赤く塗ったものが、殺人事件の犯人探しの手がかりとして出てくる。実際にはありえない真珠の色で違和感を与える表題は成功といえるでしょう。

 海外ミステリーではアイリッシュの、こちらも「夜の真珠」。ですが原題は“Dilemma of the Dead Lady”というもので、真珠の首飾りが殺人に使われます。もうひとつはトマス・ハンショーという作家の「虹の真珠」。ある架空の国の王家に伝わる秘宝を巡るサスペンスです。最後にスコット・オデル(オデール)の『黒い真珠』を紹介しておきましょう。舞台はバハ・カリフォルニアのラパス、といえばスタインベックの名作『真珠』を思い出さずにはいられません。スタインベックの主人公は真珠漁夫、オデール作品は若い真珠商人が登場する話ですが、共通するのは素晴らしい真珠を得たことで大きく運命が変わってゆくことです。評論社刊(小野章訳)は児童書の扱いですが、大人が充分楽しめます。

『明るい仲間・夜の真珠』

『明るい仲間・夜の真珠』



『赤い真珠』

『赤い真珠』



『黒い真珠』

『黒い真珠』

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