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67.蛇のジュエリー

  2013年の干支は癸巳(みずのと・み)。対応する動物は蛇です。実際には毒を持つ種類もあり、なによりその姿や生態から、爬虫類のマニア以外は親しみをもって接する機会はそう多くないと思われますが、ジュエリーの分野では結構見ることが多く、様々なかたちで用いられています。  たとえば十九世紀にイギリスで作られたネックレス(写真1)は蛇の胴体が首の周りを取り巻く形で装着します。ぜんたいは金のパーツを組み合わせてしなやかな動きを持って作られ、外側を半分にカットされた真珠、いわゆるハーフパールで飾り、根元を金の輪で覆って固定したものです。留め金は蛇の口の内部に隠され、尻尾側の突起を差し込んで使用します。口の中は鋭い歯が表され、丸く磨かれたルビーの赤い目とあいまってなかなか不敵な表情を見せていますね(写真2)。こういう迫力あるデザインは、向かって来る魔物に対峙して身につけた本人を守るという意味で、ジュエリー本来の護符の機能を保っているといえるでしょう。ですから顔は相手を睥睨するように本人の左側に持ってくるのが正しい位置で、留め金だからといって後ろに廻しては効果がありません。このように自分の尻尾を口でくわえた蛇を「ウロボロス」といい、円環となっていることから死と生を結びつけて永遠をあらわす象徴的な意匠として知られています。  

  同じネックレスでもトルコブルーのエナメルで加飾されたものは(写真3)口元にハートのペンダントを下げていて、その表情も威嚇というよりは剽軽に見えます。もちろん笑いを取るつもりではなかっただろうと思いますが、このあたりに作り手の器量がうかがえます。ハートの裏側を見ると(写真4)ガラスの蓋があり、中に細い糸のようなものが見えますが、これは実は毛髪の束です。故人あるいは縁のある人の髪の毛をこうしたかたちで使って何らかの感情を込めることは、十九世紀のジュエリーでは普通に行われており、より広範なセンティメンタル・ジュエリーというカテゴリーに属します。

  ジュエリーが単なる装飾ではなく感情表現のひとつであるという側面は、今日あまり意識されませんが、アンティークを見る際には常に念頭に置いておく必要があるでしょう。そのもっとも濃密な例が次のブローチ(写真5)です。周囲は尻尾を頭に巻きつけた蛇で、先の事例でわかるように「永遠」が読み取れます。蛇の口から下がる部分の中央はガラス蓋で、中には髪の毛を編みこんだものが納まります。その周囲に色の異なる宝石がはめ込まれていますが、左から順にルビー、エメラルド、ガーネット、アメジスト、ルビー、そしてダイヤモンドです。それぞれの頭文字を読むとREGARD、すなわち「親愛」のメッセージが浮かび上がる仕掛けです。

  髪の毛の持ち主に対する「親愛」の感情は「永遠」に続く、とでも理解することができるでしょうか。実際に周囲の蛇の裏側にはふたりの人物の名前と生没年が刻まれており、その本気の度合いが伝わってくるような重い作品です。

       写真1

        写真2

       写真3

       写真4

       写真5


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