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68.ハートのジュエリーから天使の話へ

 デパートやモールで、バレンタインディのギフトコーナーが彩りを放つ季節になりました。装飾の基本となる色彩は赤で、モチーフとしてハートが多く用いられることは毎年変わらぬ風景です。  

  時節柄、ということで博物館にあるハートモチーフのジュエリーをご紹介しましょう。 写真(1)は縦が5センチ5ミリ、上下二つの部分からなるブローチです。上は楕円形で、下がハート型。上下ともに中央に表面をカットした水晶がはまります。周囲を取り巻く真珠は丸いものを半分に切ったハーフパールで、銀の台に埋め込むようにして留められています。1700年頃のイギリスの作品と伝えられ、前の持ち主はさる著名なジュエリー収集家でした。

  さて、この上下、もとは別々だったと思われます。何時の頃か改作され、つながれて現在の形になったので、それぞれ元来は「スライド」という、いまは見かけることのないジュエリーでした。これは細い布のリボンに通して首や手首に装着するもので、ネックレスあるいはブレスレットの一種といえるかも知れません。楕円の裏側四隅にリボンを通すための枠を付けていたと思われる痕跡があり、ハートの裏側にも中央に芯が二本出ているのがわかります(写真2)。

  下のハートの形をしたペンダント部分の、水晶で覆われた中身に注目しましょう(写真3)。すると二人の人物が向かい合って手を差し伸べているのがわかります。背中には羽根があるのでこれら二人は天使。その足元には奇妙な形のものがあります。退色しているのでわかりにくいのですがこれはハートが二つ結ばれた図で、上に出ている金色の部分は炎です。つまり炎を上げて燃えるハートというわけです。いったい何のこと?と訝しくお思いかも知れませんが、これは「愛の不滅」「愛の勝利」をあらわす図像です(写真4)。

  現代の私たちはハートを愛のシンボルとして普通に受け取っていますが、同様に当時の人々にとって「燃えるハート」は受難に打ち勝つ「愛の勝利」をあらわすシンボルとして理解されていました。今でもハートに矢が刺されば恋の成就、ひびが入ればそれは失恋を意味します。それと同じといえば良いでしょうか。

  上の楕円の中の図は向かい合う天使が王冠を支えており、神の栄光を讃える、とでも読み取れるでしょう。中央の金線は何かのモノグラム(文字を組み合わせて図案化したもの)のように見えますが、読み解けません。ここに登場する人物像は羽根が生えていて、しかも衣服を付けているので天使とわかります。天使は文字通り天、すなわちキリスト教における神のお使いで、厳格な階級があり、それぞれに固有の名前と役割を持っています。

  同じように羽根が生えていても裸でいる男の子はキューピッドで、こちらの出自はギリシャ・ローマ神話です。ハートに矢を射るのは天使ではなく、キューピッドですね。ところがこれらは混同されてしまいます。ルネサンス以降の絵画に描かれる羽根を持つ幼児はプット(複数はプッティ)と呼ばれ、裸でいることからわかるようにキューピッド由来なのですが、宗教をテーマにした場面にも普通に登場します。ジュエリーでも同様で、写真(5)のネックレスに見られる子供たちは正確にはプッティというべきですが、この言葉はまったく普及していません。というわけで「可愛い天使」なる語が広く使われているのですが、本当のところは、まあ、そういうことです。

       写真1

        写真2

       写真3

       写真4

       写真5


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