知る 学ぶ 楽しむ
真珠王からのメッセージ 海女 パールミュージアムコレクション 入場料金 チケット情報 営業案内 アクセス 真珠島のパワースポット 島内マップ よくあるご質問 ホームに戻る

83. 「海底二万里」

 ミキモト真珠島は年末年始も休みなく、もちろん博物館も開館です。初詣の賑わいのあとで、海の風景を楽しみながらゆったりと新年を寿ぐには鳥羽は絶好の場所です。大勢のお越しをお待ち申し上げます。
 さて、冬休みに何か一冊、という向きに『海底二万里』などいかがでしょう。児童向けに翻案されたのを読んだという方は多いかも知れませんが、真珠の話が出てきます。
 これは潜水艦ノーチラス号に乗り合わせることになったパリ博物館のアロナックス教授とその従僕コンセイユ、それにカナダ人の銛打ちネッド・ランドの三人が、ネモ艇長と共に世界の海を経巡って様々な驚異と遭遇する物語で、19世紀後半の博物学趣味を味わうには絶好の一冊といえます。真珠に関していうと、まずネモ艇長のコレクションが披露されますが、それは(紅海のタイラギからとったばら色の真珠、紅色アワビの緑色の真珠、そのほか黄色い真珠や青や黒い真珠あらゆる太洋のさまざまな軟体動物や北海のイ貝からとれた珍しいもの、最後にもっとも珍しい真珠貝からとった大変高価ないくつもの標本など、これら真珠のなかには、ハトの卵よりも大きいのがあった。それらの真珠のなかには十七世紀のフランスの旅行家タヴェルニエがペルシャの王様に三〇〇万フランで売ったものよりも高価なものがあり、わたしが世界にその比をみないと思っていたアラビアの港町マスカットの導師所有のものより上等のものがあった。(江口訳120㌻))という内容。これらは貝殻コレクションの一部として艇内の広間に展示されています。
 こういうコレクションは自慢する相手が目利きでないと空振りに終わりますが、そこは博物学が専門のアロナックス教授、それにその従僕とはいえコンセイユも、ネッド親方も分類学に造詣が深いので、ネモ艇長も見せる甲斐があるというものです。
 中盤ではセイロンの真珠採りが取り上げられる。マンナール湾(マナール湾とも)は天然真珠の漁場として古来有名なところで、この近海を通過するに際してネモ艇長は教授たちを漁場に誘い、自分が育てている真珠貝を見せようとします。それは幅が二メートルもある巨大なシャコガイで、ネモ艇長はその体内に〈インド人や中国人の例に倣ってガラスか金属のかけらを押しこんで〉真珠を作ろうとしていて、アロナックス教授はその出来つつあるシャコガイ真珠を一〇〇〇万フランと見積もります。ヤシの実ほどの大きさとはいえ、しょせんシャコガイなので輝きはなく、宝石としての価値はありませんが〈いわば自然の驚異〉として評価するあたりはさすが博物学者です。
 そのあとはお約束の活劇で、解禁前に真珠貝の密漁をしていた現地民がサメに襲われるのをネッド親方が銛の一撃で仕留めます。実は教授はサメに対する恐怖心が強く、戦々恐々としていたのが実際に目の前に現れたので、ちょっとパニックになっています。にしてはその始終をしっかり観察しているあたりも博物学者の態度として立派なものです。
 この作品が発表された1870年当時、メビウスやへスリングといった最先端の研究者たちは真珠袋を発見していましたが、大方はいまだに寄生虫が形成に関与していると考えるレベルでした。真珠研究が大きな転換期に差しかかろうという頃の話です。この後ほど20数年で日本には真珠養殖場が出来て、予測通り真珠は人の手で育まれることになりますが、海女の水中での仕事をヴェルヌならどう書き表したでしょう。想像すると楽しくなります。


 

ジュール・ヴェルヌ『海底二万里』江口清訳 集英社文庫 1993年

 

 

シャコガイの貝殻に形成された真珠

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    

    

バックナンバー一覧に戻る
page top
  • 御木本幸吉記念館
  • 真珠博物館
  • 館長のページ