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97. ウィッシュボーン

  前回ご案内した通り、三重県博物館協会のミュージアムトークでジュエリーの見方について話をしました。このページでも書いたことのあるヤドリギや天使とキューピッド、蛇とハートなどの話題で、一時間半の講座だったが、幸いに好評だったようで、終了後に何人かの方からお声がけいただいた。ジュエリーの見方といっても、要するにどこに関心を持つかは人それぞれで、今回は図像に注目すると面白いですよ、という提案。博物館の収蔵品を紹介できたという意味でも良かったと思っている。
 事例の中で取り上げたウィッシュボーンは、前にこのページで解説したものと思っていたがバックナンバーに見当たらない。はて、思い違いかしらん。ヤドリギ同様に明治時代の御木本真珠店のカタログに出ていて、西洋デザインの受容という面でも面白い事例です。これはYの字を外側に膨らませたようなかたちで、左右は良く見ると均等ではなく、一方に小粒の真珠があしらわれている。実際に最近までペンダントとして商品になっていたので、まあ、ロングセラーといって良い。(写真①)だが、販売員はこのデザインを何と説明していたのだろうか。幾何学模様、あるいは抽象的というには何やら有機的で、意味ありげ。
 こういうデザインの解読にはやはり西洋のジュエリー研究書に当たるよりほかはない。ジュエリーの勉強を始めた頃に、基本図書として入手したマーガレット・フラワー女史の『ヴィクトリアン・ジュエリー』(1951年)にその答えはあった。だが、そこに掲載された英国宝飾店’Goldsmith & Silversmith Company’のカタログにあるブローチのデザイン(写真②)と御木本真珠店のスカーフピン(写真③)が共通していることを発見したのは我ながら手柄というべきで、どちらか一方だけの知見ではそこで停滞してしまい、ニューロンのつながりは起こらない。
 ウィッシュボーンは鳥の暢思骨で、胸の位置にある。クリスマスのご馳走に鶏か七面鳥のローストを家族で食べたとして、最後には骨が残ります。この中から件の骨を取り出し、幼い姉妹が両端を持ち合って、それぞれにお願い事を念じながら左右に引っ張り合う。各自の力の入れ様、あるいは構造上なのか、骨は長い方と短い方に折れる。そして長い骨を取った方の願いが叶うという。我々にはとんと馴染みのない遊びだが、英会話の先生に聞いたところでは知っているということだった。文字通りのウィッシュボーン(願いの骨)です。
 御木本真珠店はこの骨のデザインをピンブローチに採用した。本家英国の広告は1901年(明治34年)で、御木本のそれは明治41年だから多少のタイムラグはあるが、これからジュエリー産業に参入するために様々な海外資料を入手したに違いない。問題はこのウィッシュボーンの意味を御木本が理解していたかどうかということだが、答えはイエス。同じページに「鯛の鯛」をあしらったピンが掲載されているのはその証拠。これは一対をきれいに取り出し、財布に入れておくとお金がたまるといった、そういう縁起物です。
 魚食民族にとっての幸運のシンボルである魚の鰭骨を持ってきたことから、当時のデザイナーがやみくもに西洋デザインを模倣していたのではないことが推察されます。
 というような話題で、ご参加の皆様には楽しい午後を過ごしていただいたのではと思っています。また、お座敷がかかるといいのだが。


 

写真①

 

写真②

 

写真③

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