知る 学ぶ 楽しむ
真珠王からのメッセージ 海女 パールミュージアムコレクション 入場料金 チケット情報 営業案内 アクセス 真珠島のパワースポット 島内マップ よくあるご質問 ホームに戻る

106. 1908

  真珠に関する書物は多々あれど、古典といえばまずクンツ&スティーヴンソンの‘The Book of the Pearl’を挙げることに異を唱える人はいないと思われます。
 著者のひとりジョージ・フレデリック・クンツは1856年、ニューヨークの生まれ。幼いころから鉱物に親しんで一大コレクションを作り上げ、ティファニー宝石店に入社、同社の発展に貢献するとともに宝石学者として多くの著作を残しています。
代表作ともいえるこの書物は1908年にニューヨークとロンドンで出版された、500ページを超える大部です。全17章から成り、古代、中世から近代への真珠の歴史から始まって、成因、構造と続き、次の世界各地の真珠採取については多くの章を充てている。ペルシア湾、セイロン、インド、紅海、日本、中国のアジア地域を皮切りに、アフリカ、ヨーロッパ、太平洋、ヴェネズエラ、パナマ、メキシコ、特にアメリカの淡水真珠に関する記述は詳細で、著者自身、誇りにしていたことが窺える。また、真珠の薬効、価値と手入れなど実際面での知識や装身具としての利用、著名な真珠の数々などを網羅した、まさに真珠の百科事典で、今日に至るまで、この本からどれだけの引用が行われたことか。オリジナル版は結構な高値が付いているようですが、近年ではリプリント専門のドーヴァー社からペーパーバック版が出ているので、簡単に入手できるようになったのはありがたい。
 図版や地図も豊富に収められ、真珠を身に着けた貴婦人の姿なども見ることができます。たとえば写真①は「マルボロ公爵夫人」。写真②は「ジョージ・J・グールド夫人」とキャプションにある。いずれも真珠のティアラ、ドッグカラー、それに何本ものネックレスで身を飾っていますが、対照的な印象の二人です。
この二人は当時のアメリカの、いわば富の象徴としてわかりやすいセレクションと思われる。マルボロ公爵夫人はコンスエロ・ヴァンダービルト、つまり大富豪として知られたヴァンダービルト家の令嬢で、故あってイギリスの公爵家に嫁いだ方であり、一方のグールド夫人も大富豪グールド家長男の令夫人。どちらも鉄道事業で巨万の富を得た、アメリカンドリームの体現者の一族です。コンスエロの場合は、金はあるが名誉の欲しいアメリカの新興事業家と、名誉はあるが金のないイギリス貴族との結婚で、本人の望むところではなかった、と知れば、彼女の虚ろな表情も納得できます。
 富の象徴としての真珠を含む宝石類が、それまでの王侯貴族から新しく台頭してきた事業家たちに移行してゆき、さらには養殖真珠の登場で、より幅広い階層の人びとまで宝飾品を享受する時代が近づいてくる。御木本幸吉は英虞湾に養殖場を運営して、真円真珠の増産まではあと少し。1910年にはロンドンに卸売店を開設、西欧の市場に養殖真珠が姿を現します。一方では古くからの産地でダイバーたちが肉体を酷使して、深い海底からあるいは川底から真珠貝を取り上げ、偶然の僥倖を願いながら中の真珠を探す。人と真珠との関わりが大きな転換点を迎えようとしている、この本が出た1908年はそんな時期でした。
 というわけで、今年度の展覧会はクンツのこの書物をテキストに、110年前の真珠採りの諸相をご紹介します。どうぞご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真①マルボロ公爵夫人

 

写真②ジョージ・J・グールド夫人

バックナンバー一覧に戻る
page top
  • 御木本幸吉記念館
  • 真珠博物館
  • 館長のページ