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116. 津山で

 講演の機会を頂いて津山市を訪問。市内にある津山洋学資料館からのお誘いで、同館の文化講演会で御木本幸吉と箕作佳吉を巡る話を、とのリクエスト。有難く承り、美しく晴れた晩春の一日、緑の風に吹かれて岡山からJR津山線の快速「ことぶき」車中の人となった。津山線に配属されているディーゼルカー・キハ47形はその昔、参宮線でも活躍していた車両で、昔のままのオレンジ色が懐かしい。快速「ことぶき」の愛称を与えられた二両編成は旭川沿いにゆっくりと山間部を分け入ってゆく。車窓からの低い山並みは萌え出る若い緑。所々の薄い紅色は遅桜か。日暮れにエンジン音を響かせて津山駅に到着。右手に円形の列車庫があって、これが「まなびの鉄道館」。時間が許せば往年のキハ52やキハ58を間近に見たいところだが、今回、その余裕はなく残念。洋学資料館仁木館長の出迎えを受けて、吉井川沿いのホテルに投宿。
 翌日、朝飯前の散歩。案内標識に従って山手方面に向かい、箕作家の墓所を訪ねる。横手の説明板を読むと、ここは遠いご先祖の眠るところで、箕作佳吉博士のお墓は東京の谷中墓地にあることがわかる。そうだったのか。翻って、我が鳥羽には御木本幸吉のお墓があるが、付近にその寺への案内も説明もない。観光スポットかどうかはさておき、掃苔したいという向きもいるだろうに。
 津山市内を東西に走る出雲街道は古い町並みの情緒が残り、お城の花の頃にはそぞろ歩く人で賑わったはずだが、日曜日の早朝で人影は少ない。津山洋学資料館はその一角、箕作阮甫生家の横に広がる。旧資料館を訪れたのはもう30年近くも前で印象も薄れているが、平成22年に出来た新しい館はコロニアル風で気持ちが良い。元館長の下山氏に展示室を案内頂く。館の設立、展示の構想からデザインまで下山氏が指揮されたので、その説明の言葉の端々に資料に対する並々ならぬ愛情がにじみ出る。建物全体のプランが五角形で、室内も五角形。これは、展示業者を泣かせたのだろうな。第一展示室で格天井から見下ろす海の修道士やマンドラゴラなどの怪しい視線を感じながら、洋学受容の揺籃期についての貴重な資料を拝見。『解体新書』の翻訳に挑戦した杉田玄白と前野良沢の苦労と相剋など、稀覯本を前にすれば遠い昔のことが現実味を帯びる。また、津山藩医で蘭学者だった宇田川榕菴は、酸素、窒素、水素など今日用いられる科学用語の多くを残したことでも知られるが、その筆になる楽器の絵や西洋音楽の理論、トランプや鞘絵などを見ると、様々な分野で楽しみを見出す才能に長けていた人だったことがわかり、親しみがわいてくる。じっくり見ればいくらでも発見のある資料館で、ここの見学を目的に津山を訪れて損はない。
 さて、午後からの講演。会場の椅子はほぼ埋まって嬉しい限り。新しく仕込んだ資料を紹介しながら一時間半を勤める。時間配分の不備や、言い間違いなどあり、いつもながら話し手としては満足な出来とは言い難いが、拍手で締めくくられた。ありがとうございました。
 この資料館で糸口を得て、膨らんだ好奇心を満たすことにしよう。ご教示いただいた吉村昭の『冬の鷹』、それに宇田川榕菴について読む楽しみを何よりの土産に、帰りの「快速ことぶき」で居眠り。

 

 

 

   津山洋学資料館

 

 

    快速「ことぶき」

 

 

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