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105. ヒストリア余談 NEW!!

 開催中の「にっぽん真珠ヒストリア」では江戸末期までの真珠に関係する文献を取り上げていますが、明治時代の初期、すなわち、養殖真珠登場以前に書かれたものもなかなか興味深い。今回は展示に反映できなかったそれらのうち、二点をご紹介します。
 『牙氏初學須知』
 まず、明治9(1876)年に刊行された『牙氏初學須知』。開国後の近代化を急ぐ明治政府は初等教育用に海外の教科書を翻刻、採用しました。この『牙氏初學須知』は理科の教科書で、表題の牙氏は原著者のGarrigues(ガリグェーと表記)を表します。館では京都の田中治兵衛、佐々木惣四郎が出版人となった第5巻上中下と奥付のない同じ内容のものを収蔵しています。
 その5巻の下「動物学目録第43」が牡蠣、青貝、真珠の解説に充てられており、真珠は「青介と同質にして是も亦『アヴィキュル』種の牡蠣より分泌する者なり。真珠を生ずる介類は體内に他物混入して局所を奮興しその分泌をして益々強勢ならしむ。その真珠は一の小體を中心とし之を纏繞して球九(ママ)をなすなり」(原文カタカナ)とある。断片的ながら貝の体液分泌という成因の基本を押さえているのが興味深い。アヴィキュルはAviculaあるいはAvicularのことと思われるが、現在では用いられない真珠貝の属名です。続いてセイロンでの真珠採取の様子の紹介があり、最後は模造真珠の製法に触れている。これをもとにして考察を続ければ真珠養殖への道のりは近かったかも知れません。
 この教科書は複数の出版所から発行されたと思われ、翻訳はいずれも田中耕造という人物によっています。『日本人名大辞典』によると嘉永4年の生まれ。昌平黌で学び、のち中江兆民にフランス語を習って司法庁から警視庁に入り、川路利良に随行してフランスの警察制度を視察、その後は政界入りしたが明治16年、33歳で死去。この訳業は、生年から見ると25歳の時の仕事です。明治という時代の若かったことに思いを致さずにいられない。
 『海産論』
 イギリスのシモントス(Simmonds)の原著を贈られた開拓使長官黒田清輝が濱野定四郎、伊藤茂右衛門に命じて翻訳させ、明治14(1881)年に出版された水産資源の利用に関する書物。漁業振興に積極的だった明治政府にとっては必須の知識です。第3編の第2章、第3章(85ページ分)が真珠に充てられているが、その多くは真珠母すなわち貝殻採取とその利用、世界各地の天然真珠採取についての記述で、この項目に関する限り、国内の水産振興に資するところは少なかったのではないか。活字本だから読むのは問題がない。ただ、困るのは固有名詞で、たとえばアイサカクニウトンはアイザック・ニュートンとわかる。けれど、ユウスレスハアハア、とかブウラクナアフレエセンタアなどという地名、あるいは学名はお手上げ。幸い、この本の原著’The Commercial Products of the Sea’はリプリント版で出ているので、先日、注文をしておいた。ユウスレスハアハアという息切れしそうな地名はどこにあるのか。本の到着が待ち遠しい。

  『牙学初学須知』

 

    『海産論』

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